躰道の法形にはご存知の通り運身による加点がある。
バク転0.2点 バク宙0.4点 捻りバク宙0.8といった具合。
そうすると全く同じ技術レベルの人間が対戦した場合に
「そもそも運身がいっぱい入ってる法形を選んだほうが得」
という現象が起きてくる。
旋・運<変<捻<転(体) こんな感じか。
その法形の難易度云々の前に運身の本数で得点の期待値が
変わってしまうのである。
ずっと転体の寡占状態であった大会の法形に対し、
他の法形や技術にも脚光を当てるべく、ここ十年ほど各大会の
予選に指定法形が定められている。
(実際これが実施される前の学生大会など、一回戦から転の戦い
がずっと続く感じで、旋なんか一年の時以来卒業まで一度も
通さないなんて学生はザラだった。)
で、予選2回戦、あるいは予選全部指定で他の法形になると
やはりいろんな法形同士でぶつかりあう試合は多く見られるように
なった。すると法形のレベル的には運の選手が上だが、加点して
みると転の選手が勝った。なんてことが実際出てくる。
審判が全員キチンと点数を考えて加点を正確に入れているかどうかは
(実は微妙な問題だが)置いといて。
学生たちにとって(さらに言うと少年少女の大会はもっと深刻だ!)
どの法形で3回戦以降を戦うかというのは毎年悩みの種である。
指導者の側にも「運身のみの加点をやめて、例えば旋体の法形に
於いて動功五戒に正確に則って素晴らしい旋回をした場合は
加点をすべきだ」という意見も出ている。
確かに一理あって、例えば法形的には短くて運身も無く見せ場も
そんなに無い運陰の法形。これを足甲踏跌が完璧に表現されて
二段蹴りの高さも素晴らしいといった運の加点 というものが
あれば、運身の苦手な女子であっても、武道的に非常に良く鍛錬
されていた場合に転陰と互角に戦えるかもしれない。
躰道を長くやっていると非常に推奨されるべき意見と思われるのだが
おそらくこれ、本当に実施されると運身に無理にチャレンジする
者が激減すると思う。身体能力に最初から優れていればもちろん
練習するだろうが、必死にやらなきゃできるかどうかギリギリ と
いうラインの選手はやらなくなるのではなかろうか。
躰道を躰道たらしめている運身と、躰道を武道から遠ざけているとも
言えなくも無い運身。けっこうバランスの難しい問題なのである。